走れ

走れ 徹底教材研究!

 今回は、構造学習についてほとんど知らない方々の参加もあったので、そのような方々にも分かりやすく進めるようにした。今回は東京書籍4年「走れ」を扱うことにした。


⚫️演習について

 事前に話を読んでいたので、まずお話の軸の洞察から発表し合うことにした。


発問「お話の言いたいことは何だろうか。」

(のぶよ視点で読みたい場合の発問は、「お話全体を通したのぶよの心はどのようなものか」や、「のぶよは家族のことをどう思っているか」なども考えられる。)


 挙がった軸としては、「家族愛」「家族がいれば力が出る」などがあった。ここでは、視点は決めておらず、そこで議論があったが、それは後につながる。

 演習リーダーから、今回は参加者の実態を考え、軸を統一したいとのこと。参加者は皆、家族の絆について洞察をしていたことから、「家族のたがいを思う心は、何にも負けない」と軸を統一し、読みのめあてを、「何にも負けない家族のたがいを思う心とはどのようなものだろうか」と設定した。

 

 次に、各々が立体図を作り、花丸の文を発表することにした。

花丸=軸が最も表れている文


挙がった花丸の文は、

「お母ちゃんは、くいっと弁当箱をつきだした。」

「わりばしを拾うとぎゅっとにぎってけんじを追いかけた」

「わりばしにメッセージけんじ一等賞だ、のぶよ行け!」

「走った、どこまでも走れる気がした」

「ラストという言葉がこんなに誇らしく思えたのははじめてだった」

「2人は走った。笑いながら走り続けた」などである。


視点を決めていなかったので、のぶよやお母ちゃんの心情が表れた文がある。


のぶよ視点の意見では、

 弟のけんじの幼さや、お父ちゃんが亡くなってから一人で弁当屋を切り盛りしているお母ちゃんの苦労を、のぶよはお姉ちゃんらしく理解し、家族のサポートをしている。

 しかし、のぶよ自身も、自分を見てほしい、短距離走は苦手で嫌だなという小学校四年生の子供らしい気持ちがある。

 いよいよ短距離走の出番がきて、体が重く感じていたが、けんじとお母ちゃんの応援の声が聞こえて、体がぐっと軽くなった!家族の力でのぶよは気持ちよく走れるようになり、結果はラストだったけれど、そのラストという言葉さえも、家族の力を感じた今では誇らしく思えた。

 最後に、けんじとのぶよが校門を出て、「2人は走った。笑いながら走り続けた。」という文があるが、そこには今後の家族模様が表れているのではないかという意見もあった。

参加者の描いた立体図

話し合いを通して、初参加の先生方から、以下のような意見があった。

①今回はお話の言いたいことを軸とし、視点は決めなかったが、読んでいるうちにのぶよ視点で考えることが多かった。また、のぶよ視点で読むことで、家族それぞれの思いを読み取ることができると感じた。


②みんなで話し合う前は、この話の題名「走れ」は、短距離走のことだけだと思っていたが、最後の一文には家族愛がこもった走りがあり、その対比が面白い。



 ①については、教科書にも中心人物の心情の変化を読み取ることが一つのねらいとされている。のぶよの家族を思う心情を読み取る中で、そのきっかけや原因となる文に着目すると、お母ちゃんやけんじの心情まで関係付けながら深く読み取ることができる。

 ②については、構造学習の理論を通して、全体を先につかむという操作があったからこそ、今回は家族をテーマにした読み取りができたのではないかと思う。場面読みをすると、部分部分の総和となり、そこに一貫したものは存在しない。構造学習の理論があってこその読み取りができたと思う。



🔵最後に

 谷戸会長からは、最後に総括して今回の学習会の感想や自身の読みについて話していただいた。

今回は、それぞれの読みがあったからこそ、有意義に伝え合うことができた。

常に全体を見ようとする姿勢を身に付けさせたい。それこそが洞察力である。

教師が本質を見抜く力を身に付けていると、どの子の意見もブレずに生かすことができる。個別最適化につなげられる。