一つの花

6月19日、若葉の会月例会を行いました。

今回は、いつもの若葉の会のメンバーに加え、小池先生の同僚の方々、こくちーずから申込みされた方々とともに、「一つの花」の演習をしました。


4年物語文『一つの花』

◉全体から軸をつかむ

初めて参加する方もいらっしゃったので、まずは「お話の言いたいことは何か」という比較的ざっくりとした発問で、軸の洞察を行いました。

ここで大切なのは、全体からつかむという思考操作です。この思考操作ができれば、実際にはいろんな発問があってもよいと思います。


参加者の洞察した軸

ゆみ子の幸せを願う心

一つだけを大切にする

大変な状況を乗り越えていく家族愛

ゆみ子が大切で、幸せになってほしい

ゆみ子を通して、家族について考えてほしい

戦争のつらさと今の幸せ


皆さんの考えを見ると、ゆみ子の両親を視点にしたものと、筆者の考えを表現したものがあることが分かります。

中心人物を視点にしても、筆者を視点にしてもどちらでも読み進めることはできますが、今回は、物語文の特性を味わいながら、みんなで読み深めることを目的とし、ゆみ子の両親を視点とした「ゆみ子の幸せを願う心」を軸に統一しました。

この段階では、まだ文章全体をじっくりは読んでいないので、「ゆみ子の幸せを願う両親の心とはどういうものだろうか」というこれからの学びにつながる読みのめあてを立てました。


◉じっくり読み深める

次に、「ゆみ子の幸せを願う両親の心」が表れている文に各々でサイドラインを引き、それを共有しました。

軸があるので、ブレることなく、両親の心について読み進めることができます。

自分もここだと思って引いていた文、自分は引いていなかったけど他者は引いていた文、共有することで読みが深まっていきます。


しかし、それらの文にも深浅があります。特にこの文に「ゆみ子の幸せを願う両親の心」が強く表れているというものがあるのです。

それを重みづけと言い、それを表すために図にして表現しました。

お互いの図を説明したり、この時の両親の気持ちはこうだったのではないかと話したりすることで、どんどん読みが深めることができました。

その一部を紹介します。

 戦争が激しかったこの頃、ゆみ子が最初にはっきり覚えた言葉は、「一つだけ」だった。最初にはっきりと覚えた言葉なので、いかにその言葉を母が使わざるを得なかったかが分かる。母は、自分の食事も分け与えることでゆみ子が悲しまないようにしていた。父も母もそんなゆみ子の将来を心配しているが、父は、ゆみ子の前では心配を見せないように、また、少しでもゆみ子に幸せを感じさせられるようにと高い高いをしてあげた。


そんな父も戦争に行かなければならなくなった。母は、悲しい別れにならないように、道中、一つだけとせがむゆみ子におにぎりを全て与えた。それでも「一つだけ、一つだけ」とわめくゆみ子に、父は近くに咲いているコスモスを取ってゆみ子に渡す。花ならば、これから自分がどうなってもゆみ子のそばにいられる。そして、ゆみ子のことをずっと見守っていられる。そんな思いをもって、じっとゆみ子の握ったコスモスを見つめていたのかもしれない。

また、ここで何も言わなかったのも、ゆみ子を悲しませないようにと、父なりに考えたことだったのだろう。


それから月日が経ち、ゆみ子と母が住む家の周りには、あの「一つだけの花」が辺り一面に咲いている。父がずっとゆみ子のことを見守っている様子が分かる。戦争が終わり、「お肉がいい?お魚がいい?」と食にも困ることがない平和が訪れ、ゆみ子はその日、小さなお母さんになってお昼を作るほど、すくすくと育ち、両親のゆみ子の幸せを願う心が叶っている様子が分かる。


物語の前半と後半では「一つだけ」の意味合いが変わっていると思う。前半は、悲しさや悲惨さを含んだ少しのという意味の「一つだけ」に対し、後半は希望に満ちており、一つだけしかないという意味の「一つだけ」になっていると思う。


最後に

今回は、参加者が各々の読みを伝え合い、深め合った形としましたが、子供たちも、このような思考操作をすることで、物語の本質を自らしっかりと読み深められると思います。ぜひ、皆さんも一緒に学び合いましょう!

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コメント: 1
  • #1

    tiger (木曜日, 24 6月 2021 22:38)

    私、初めて4年生の担任となりました。
    「一つの花」、楽しく学習することができました。
    お話に力があると、子供たちもいきいきと学習しますね。